6.2 「国の答弁書NO.1」 国の答弁「1」

「テーマAは与党マニフェストを支持し、テーマBは野党を支持したかったが、一票に絞れ
なかったので白紙投票をするほかなかった、その苦しみを償え、またそうした不条理を補完す
るための国民投票や参政員制度制定は国民の権利である」と、国に対して27/4/22に求償訴訟
をしました。それに対して5月31日に国の指定代理人からの答弁書が裁判所に提出されました


訴状

以下は裁判所に出された国の「答弁書」の内容です


答弁書

大阪地方裁判所弟23民事部C1係ーーー  御中



国指定代理人 
上席訟務官ーーーーーーー秋里光人 
訟務官ーーーー千手茂美
第1 ..... 請求の趣旨に対する答弁

1 .. 本案前の答弁

  (1) 請求の趣旨第2項に係る訴えを却下する
  (2) 訴訟費用は原告の負担とする
      との判決を求める

2 .. 本案の答弁

   (1)請求の趣旨第1項に係る請求を棄却する
(2)訴訟費用は原告の負担とする
       との判決を求める

第2 ..... 本案前の答弁の理由

  1.. 本件で、原告は、「国民全員の利害に関わる重要な政策案件」に関する
    国民意思を直接問うための「国民投票制度もしくは参政員制度」(以下「本件
各制度」という)が、憲法で保証された「選挙権」の行使の機会を確保するため
    に必要不可欠であるにも関わらず、これを制定するための立法措置を執らなか
    ったこと(以下「本件立法不作為」という)が違憲であるとし、被告に対し、1、
    慰謝料1万円の支払いを求める(請求の趣旨第1項)とともに、2、本件立法不作
    為を認めた上、本件各制度のような方法により「有権者の意思を反映させる方
    法」を実施すべき「制度改正」を行うことを求める。(請求の趣旨第2項。)

   2 ..憲法は、三権分立主義を採用し、司法権は裁判所に属するものとし(76条1項)
    、これを受けて裁判所法3条1項は「裁判所は、日本国憲法に特別の定めのある
    場合を除いて、一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める
    権限を有する」と定める。
    上記「法律上の争訟」として裁判所の審理の対象となるのは、法令を適用する
    ことによって解決し得べき当事者間の具体的な権利又法律関係の存否に関する
    紛争に限られるのであって、このような具体的紛争を離れて、抽象的に法令等
    の違憲に関する判断を裁判所に求めることは裁判所が行使する司法権の性質上
    許されず、さらに進んで、国家機関である国会に対し、特定の内容の法律を立
    法すべき義務を課すことを裁判所に求めることは三権分立の観点から許されな
    い。
  これを請求の趣旨第2項に係る訴え(上記1の(2))についてみると、原告は、
    本件立法不作為が違憲であることを前提に、本件立法不作為を認めた上、本
    件各制度のような方法により「有権者の意思を反映させる方法」を実施すべき
    「制度改正」を行えとの判決を求めているのであって、これは、我が国の選挙
    制度に関する法律(公職選挙法)につき、具体的な紛争を離れて抽象的にその違
    憲であることの確認を裁判所に求めるものであるか、あるいは国家機関である
    国会に対し、特定の内容の法律を立法してその「制度改正」を行うべき義務を
    課すことを裁判所に求めるものにほかならない。
    そうすると、上記訴えは、我が国の選挙制度に関する法律につき、抽象的な憲
    法適合性の判断を求めるものであれば「法律上の争訟」に当たらないから、
    裁判所が行使する司法権の性質上許されず、また、国家機関である国会に対し
    特定の内容の法律を立法すべき義務を課すことを裁判所に求めるものであれば
    三権分立の観点から許されない

したがって、請求の趣旨弟2項に係る訴えは、いずれにしても不適法であるから
    その却下を免れない。

第3 .........  請求の原因に対する認否

    弟45回衆議院議員総選挙が平成21年8月30日に施行されたこと、「国民全員の
    利害に関わる重要な政策案件」に関する国民の意思を直接問うための「国民投票
    制度又は参政員制度」(本件各制度)が制定されていないことは認め、その余の
    事実主張は不知、法的主張は争う

弟4 .........  被告の主張

   原告は前記のとおり、本件立法不作為が違憲であるとして、被告に対し、慰謝料
   1万円の支払いを求めており(請求の趣旨第1項)、その法律上の根拠は訴状の記載
   から必ずしも明らかではないが、被告はこれを国家賠償法(以下国賠法という)1条
   1項に基づく損害賠償請求であると善解する

      1 ... 国賠法1条1項の違法性について
    国賠法1条1項は、「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務
    を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国
    又は公共団体がこれを賠償する責に任ずる」と規定する。
     上記「違法」とは、公権力の行使に当たる公務員が、個別の国民に対して負う
     職務上の法的義務に違背することを言う(最高裁昭和60年11月21日第1小法廷判決
    ・民集39巻7号1512ページ、最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087ページ)

2 ......... 立法行為と国家賠償請求について

     上記の通り、国賠法1条1項にいう「違法」とは、公権力の行使に当たる公務員
     が、個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背することを言うのであ 
      るから、国会議員の立法行為(不作為を含む、以下同じ)が同条項の適用上違法
     となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して
     負う職務上の法的義務に違背したかどうかにより決せられるのであつて、当該
     立法の内容の違憲性の問題とは別に判断されなければならない。

     即ち、仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、そ
     のゆえに国会議員の立法行為が直ちに違法の評価を受けるものではない。
     そして、国会議員の立法行為は、本質的に政治的なものであるから、国会議
     員は、立法に関しては、原則として国民全体に対する関係で政治的責任を負う
     に留まり、個別の国民の権利に対応した法的義務を負うものではない。

     したがって、国会議員の立法行為が、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受
     けるのは、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにも関わらず国会
     があえて当該立法を行うというような、容易に想像し難い場合に限られる(前
     掲最高裁昭和60年11月21日第一小法廷)
     すなわち、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保証されている権利を
     違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保証されている
     権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠で
     あり、それが明白であるにも関わらず、国会が正当な理由なく長期にわたって
     これを怠る場合には、例外的に、国会議員の立法不作為は、国賠法1条1項
     の適用上、違法の評価を受けるというべきものである(前最高裁平成17年9月
     14日大法廷判決)

3 ........   本件立法不作為は、国賠法一条1項の適用上違法の評価を受けるものではない      こと

     憲法は、前文において「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであ
     って、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれょを行使し、
     その福利は国民がこれを享受する」と定め、「国権の最高機関」(41条)で
     ある国会は、「全国民を代表する選挙された議員(43条1項)で組織する衆議院
     及び参議院で校正するもの(42条)と規定して、代表民主性の原理に立つことを
     明らかにする。他方、憲法は、国民が自ら国家意思を決定するという直接民主
     的方法が地方自治に関し特別法の住民投票(95条)があるが、直接民主制的方法
     が憲法上明記された場合に限られるかどうかは解釈上議論があるところである
     (佐藤幸治・憲法弟3版)106.107ページ。松井茂記・日本国憲法(弟2版)147.148
     ページ。吉田善明・日本国憲法論(第三版)82-83ページ参照)。

     本件各制度(国民投票制・参政員制度)は憲法上明記されたものではなく、これ
     が許容されるかどうかは上記のとおり議論があるところであるから、仮に、憲
     法が採用する代表民主制の原理に抵触することがないとしても、その採用は、
     国会の立法政策に委ねられているものというべきである。

     そうすると、本件各制度が、憲法上保証されている国民の権利行使の機会を確
     保するために必要不可欠であるということはできず、それが明白であるとも
     いえないことから、したがって、本件立法不作為は、国賠法1条1項の適用上、
     違法の評価を受けるものではない

弟5............ 結語

     以上の次第で、請求の趣旨第2項に係る訴えは不適法であるから却下されるべ
     きであり、請求の趣旨第一項に係る請求は理由がないから棄却されるべきで
     ある

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